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2012年3月16日
2012年2月定例県議会を終えて

日本共産党福島県議会議員団
団 長  神山 悦子
副団長  宮川えみ子
副団長  阿部裕美子
幹事長  宮本しづえ
政調会長 長谷部 淳

はじめに

 未曾有の被害をもたらした東日本大震災・原発事故から1年が経過しました。大地を揺るがしたマグニチュード9.0の大地震と、地上の人も家も押し流した大津波、さらに東京電力福島原発の事故による汚染と避難。福島県はいまも被害のただなかにあります。
 この冬、被災地は例年以上の雪と寒さに苦しめられ、仮設住宅の防寒対策が不十分で夜も寝付けないなどと悲鳴が相次ぎました。
 医療や教育など社会基盤の崩壊は深刻です。被災と避難生活の長期化で介護を求める高齢者が急増しており、介護認定は昨年より2割も増えたといわれます。人間らしい暮らしの回復は急務です。
 地震や津波から助かった命がその後の避難生活の中で損なわれるなどというのは絶対許されないことです。
 東日本大震災・原発事故で避難を余儀なくされ、避難生活を送る人たちは16万人にものぼり、事故の収束や除染、賠償を政府の責任で急ぎ、命と健康、暮らしを守ることは待ったなしです。
 いま国内では54基ある原発のうち2基を除く52基が停止中です。再稼働できていないのは、東京電力福島原発の事故原因の究明さえ終わっておらず、国民の反対の声が大きいからです。
 消費税を10%に増税する政府の方針には最新の調査でも国民の過半数が反対しています(反対55%、賛成40%、3月12日付「読売」)。
 「社会保障のため」と言いながら社会保障の切り捨て策がずらりと並ぶ「社会保障・税一体改革」の中身に、国民は不信感を強めており、生活と生業の立て直しに苦闘している東日本大震災の被災者、被災中小業者には、とりわけ過酷な増税です。
 それにもかかわらず、野田佳彦首相は「先送りできない」の一点張りで、増税法案を今月中に国会に提出する強硬姿勢です。
 原発事故の原因究明も尽くさないまま政府が「安全」だと再稼働を決断するのは、文字通り新たな“安全神話”をつくるものです。そうした“神話”を繰り返さないことこそ事故の教訓であり再稼働前提の「暴走」は許されません。
 2月定例県議会に先立ち、1月23日には来年度予算編成にかかる知事申し入れを行いました。また、2月2日には全県の党地方議員との懇談、2月7日には大衆団体との懇談を行い、県政の課題と要望について認識を深めました。
 また、6万2千人以上となっている県外避難者の声を直接聞くために、1月18日には山形市へ、1月23〜24日には埼玉県加須市を訪ね、自主避難者や避難者の方々から要望を聞きました。
 来年度の県予算を審議する2月定例県議会は、2月15日から3月16日までの会期31日間で開催されました。この県議会で代表質問には宮川えみ子県議、追加代表質問には阿部裕美子県議、一般質問には長谷部淳県議、総括審査会質問には神山悦子県議が立ちました。
 また、最終本会議の討論は宮本しづえ県議が行い、議案第1号・平成24年度県一般会計当初予算、議案第9号・平成24年度港湾整備事業特別会計予算、議案第24号・県税条例の一部を改正する条例、議案第48号・県教職員定数条例の一部を改正する条例、議案第57号・県の行う建設事業等に対する市町村負担についての5件に反対の立場で討論しました。また、人事案件では副知事、教育長、監査委員に新任の提案があり賛成しました。
 請願の提出で党県議団が紹介議員になったものは8件で、新婦人県本部提出の「放射線等に関する副読本の見直しを求める意見書の提出について」は趣旨採択となりました。

1、2012年度県予算の特徴と問題点

 2月2日発表された県当初予算案は、総額で1兆5,763億円、対前年比6,763億円、75.1%の増額予算となりましたが、7,255億円が復興関連予算です。
 公共事業費は、総額2,378億円で、前年比で2.45倍、この中で、1,400億円が復興関連事業です。
 原発事故による放射能汚染の不安を抱える子どもの健康を守るための、18歳までの子どもの医療費助成については、国が県民の要求を退けたために県単独で10月から実施することとし、当初予算ではシステム変更にかかる補助金を計上しました。
 現在県が行っているのは入学前までですが、県は、小学校4年生から全額負担するとし、所得制限の撤廃、レセプト1件1,000円の負担金は市町村が全部負担してきましたが、これも県が負担する方針です。県民運動の大きな成果です。
 安心して住み続けられる福島を取り戻す最大の課題である除染対策事業につしては、除染対策基金が、3,150億円積み立てられており、そのうち新年度で2,900億円使用する予定です。除染計画を作ったのは、年間被ばく線量1ミリシーベルト以上とされる41市町村中33です。町内会などに助成する50万円は、新年度も継続して申請を受け付け、高所作業を行う場合は、更に10万円上乗せ、再申請を希望する団体には、25万円を助成します。
 しかし、除染の効果的、効率的な方法が確立されておらずどの自治体も手探りの状態です。県がモデル事業を集約して統一した方針を出すべきです。
 中小企業の復興では、企業誘致にかかる助成金を300億円盛り込み、1億円以上の投資企業に対して、1企業への助成限度額を現在の35億円から一気に200億円まで引き上げました。実際には大企業への助成金になることは明らかです。一方、地元の事業者の再開率は、警戒区域で4割、二重ローン対策の債権買取決定は1件もありません。県は復興の要をなす地元事業者支援に全力を尽くすべきです。
 子どもの対策としては、ふくしまっ子体験活動支援事業費が20億円組まれましたが、2011年度の事業費が45.8億円に上ったことと比較すると、半分以下しかみていません。
 全県の学校給食施設330全てに、給食の食材を使用前に検査できる検査機器と職員の配置が行われますが、保育所にも配備が必要です。
 県民が安心して住めるよう住宅への支援が重要ですが、地震で被災した一部損壊住宅への助成は、県内28の市町村が独自の支援を行っていますが、県は、被害件数が多いとの理由で実施できないとの立場を変えていません。それでは被災者は救えません。
 岩手県では、一部損壊住宅への助成制度を作ったのに加えて、新年度で全壊住宅に対して、県と市町村合わせて100万円の独自助成を行うこととし、バリアフリー助成、県産材使用の助成を合わせると130万円となり、被災者住宅再建支援法による300万円と合わせると、全壊家屋の建て替えに530万円の助成金が出ることになります。同じ被災者でも、県の姿勢で復興には大きな差が出ています。
 県の基幹産業である農業の再建についても、原発事故の責任を持つべき国が、作付を認めるということ自体本末転倒であり、作付から流通まで国が責任を持って管理すべきです。しかし、県はその立場にまだ立っていません。
 復興財源確保のためには、徹底した無駄の見直しが必要ですが、小名浜東港開発、会津の山のみち事業などにはメスが入らず、従来型の予算を計上しています。
 原発事故による放射能汚染という重い特殊事情を抱える福島県においては、県民の不安に寄り添い、生活再建を支援するきめ細かな対策が求められます。そのためには、原発事故を人災と認め、国と東電に責任あるあらゆる対策を求める県の姿勢が重要ですが、知事は、原発事故を人災とは認めようとしません。これでは、全県民が被災者の立場で、悔しさや、不安、苦しみに寄り添う被災者支援はできません。国と東電にハッキリものを言う県の姿勢を明確にさせる運動が求められます。

2、わが党の代表質問・一般質問、他会派の質問の特徴

(1)わが党の代表質問、追加代表質問、一般質問、総括審査会質問について
◆代表質問:宮川えみ子県議(60分)
○被災県の知事として、消費税増税やTPP推進反対を明確にすることを求めましたが、知事は、県の実情は伝えるというもののこれまでの域を出ないものでした。原発収束宣言の撤回を求めることについては、県は宣言は違和感を持っている、国と事業者に安全管理に万全を期すよう求めていくと答弁しました。
○原発事故対応を恒久的なものにするためにオール福島の立場で「福島復興再生特別措置法」について、この法案は知事が提案権と変更権をもっているのでこのことを活用して積極的なイニシアチブ発揮し活用することを求めながら、法案に不足している国の責任や財政支援を明確にすること、被災者一人ひとりを支援するものにすることなどを求めました。知事はこの法律の早期成立を求めるとともに、より良い法律になるよう今後とも国に求めていきたいと答弁しました。
○新年度予算にかかわっては、小名浜東港などこれまでの大型事業推進をやめ、既存の港湾整備や浜通りの交通網の復旧や雇用の創出、被災者支援・復旧復興に全力で取り組むべきことを求めましたがこれまでの大型事業推進姿勢を崩しませんでした。
 常磐高速道路は全線開通を強く求めると答えました。
○原発事故に対して国と東電の責任を求める事、市町村支援、一人一人の生活や生業支援を基本に予算を組むこと、農林業や中小企業支援、除染対策ではきめ細かい放射能調査を、また避難者を多く受け入れているいわき市などへの市町村支援を求めました。
○県職員を増やし市町村への人的支援策を求めたことに対して検討すると答えました。
○保育所の給食検査体制の遅れを指摘し改善を求めましたが要望が上がってくれば国に求めていくという消極的対応でした。原子力賠償問題では県が責任を持って県民全体に代行申請を行う事を求めました。
○雇用対策では、求職者と求人で約9千人の求人不足になっている、新年度は緊急雇用対策として2万5千人の雇用創出を図ると答弁しました。県は、除染で地元事業者の共同組合としての組織化に取り組み雇用を拡大すると答弁しました。
○知事は、18歳までの医療費無料化については、10月から小学4年生以上を県が全責任を持って行う事を表明しました(現在小学3年までは全市町村で実施中)。また、引き続き国に18歳までの無料化と財源確保を求めました。障がい者支援では福祉避難所問題を質問しましたが現状把握もしてない状況でした。
○農業問題では要望する農家からのコメの作付制限をしないこと、漁業では漁業者の声に寄り添った支援や瓦礫処理の継続、雇用支援・中小企業支援では除染での仕事起こしなどを求めました。
○住宅政策では県営住宅を減らし続ける事の見直しを図ると答弁しましたが、県独自で一部損壊住宅支援をすることについては否定しました。宅地被害対策については、県内でこれまで16市町村から368地区の報告を受けている、国が採択条件を緩和したがさらに求めていくと答弁するにとどまりました。
○原子力賠償問題では現場の意見を聴かないで進められていることを指摘し住民や首長の意見を十分聞くことを求めました。
○教育長は、副読本問題での放射能教育ではその影響や食の問題などを正しく伝えていく、教員は増員できるように努めていく、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーはより多くの学校に派遣できるよう努める、また市町村立小中学校のエアコン設置の維持管理費用支援はしないと答弁しました。

◆追加代表質問:阿部裕美子県議(30分)
○がれき処理については、仮置き場搬入済量は約173万トン、そのうち処分済みは約50万トンです。原因と対策について明確な答弁はありませんでした。
○除染対策については、重要な急ぐべき課題とされているがなかなか進んでおらず、効果をあげていくにも詳細な汚染マップの作成が急がれることを指摘し、何が問題になっていてどう打開するかを提起しました。(1)仮置き場、(2)作業員確保、(3)除染費用の確保、その根本に国が最終処分場を明確にしていないことを指摘し、その中でも75ヶ所の仮置き場を設置した二本松市の取り組みの教訓、市独自で除染作業員認定制度を作った伊達市の取り組みなどを紹介し、比較的進んでいるとされる市町村の取り組みを集約して普及させる県の役割発揮を求めました。
 スピードを上げるための国、県の推進体制強化、大手ゼネコン丸投げではなく、地元の雇用拡大、仕事おこしにつながるやり方で進め、市町村任せではなく国の責任ある対応を求めることが必要であると指摘しました。
 除染の技術手法を確立するための総合的研究機関の整備を国に求めることを提起しました。3月末までの実施見込みについては、交付申請を行った12市町村の合計、住宅5,641戸、公共施設264ヶ所、樹園地や田畑などの農地5,803ヘクタールと答弁。除染作業員7,500人、現場監督者1,500人、施工管理者1,000人を目指して育成するとしています。
○森林労働者の線量計携帯については、雇用する森林組合や林業事業体へ支援すると答弁しました。
○子ども対策
 2013年8月末までに追加被ばく線量の約60%の削減を目指す。学校教育や保育所、幼稚園、公園などそれぞれが縦割り行政であり、子どもが生活している環境を全体として捉えて必要な手を打っていくという部局横断的体制が求められていることを指摘しました。
○避難者支援について
 仮設住宅の緊急通報システムについては取り組んでいる市町村を積極的に支援していくこと、民間借り上げ住宅の期間2年間の延長と新規受付の3月打ち切りの延長を国に求めること、高速道路の無料化について4月以降も続けるよう国に求めることなどが明らかになりました。
○障害者支援について
 災害のときの「障がいがあるゆえの犠牲」をなくしていくための取り組みは忘れてはならない重要な問題です。福祉避難所については整備について検討していく、聴覚障害者情報センターの設置については明言せず、情報提供、相談員の配備、コミュニケーション支援のための機能の充実と記録集については検討するとしました。

◆一般質問:長谷部淳県議(20分)
 原発事故対応と県内の社会保障再生を柱に質問しました。
 原発問題では、原発事故が明らかな人災と知事は認識しているかを問いました。知事は再質問、再々質問でも「人災」の認識を示すことはまったくありませんでした。史上最悪の公害の加害者に対し、人災の認識をもてず、誠実な完全賠償をさせることを迫れるのか、疑問です。
 県が51年間にわたって会員となっていた、原発推進運動団体の日本原子力産業協会から昨年10月に退会していたことを明らかにしたことは、歴史の一つの画期です。
 事故後の原発の状況について、県が現地調査もし、県民に分かりやすく情報提供することを明らかにする一方で、あしたにでも来るかもしれない原発直下地震を想定した避難計画について、国の防災計画改定状況をふまえるとの立場にとどまりました。
 社会保障再生を聞いた目的は、震災や原発事故の被害が、高齢者や障がい者、子どもなど弱者に重くのしかかることがあらためて明らかとなり、まして、社会保障「構造改革」によって、もともと遅れていた福島県の社会保障がますます脆弱なものとなり、それだけに、弱者の権利を特別に保障する社会保障本来の姿を福島から発信すべきと考えたからです。
 健診の無料化、いわき市への県立病院の新設など医療提供体制、介護保険、「子ども・子育て新システム」などについて見解を求めました。
 なお、介護保険料について、県の「介護保険財政安定化基金」および市町村の「介護給付費準備基金」を、仮に全額取り崩したとして、65歳以上の人口で割ると、年間で約6,000円の引き下げが可能との答弁でした。介護保障といえる介護保険のために、粘り強い運動が不可欠です。

◆総括審査会質問:神山悦子県議(31分)
 東日本大震災・原発事故から1年を振り返り「子どもたちを放射能から守るために」「避難者支援」「地震や水害、原発事故の教訓をどう生かすか」の3項目について質問。
○福島県の避難者は増え続け、新学期にはさらに増えると見られています。その大きな要因は「除染」がすすまないと指摘し、除染予算の枠を大幅に増やすとともに、地元業者の仕事と雇用につながるような発注の仕組みにすること、仮置き場の確保から県が関わるよう求めました。県も、地元企業優先となるようにしていくと答弁。
 また、内部被ばくを低減していくためにも毎日の主食の米を安心して食べられるようにすること。国は、基準値を超えた100ベクレル〜500ベクレルの12年度産米の作付けをようやく認めたものの、100ベクレル以上の基準値超えの米の全量買い上げは明言せず、国と東電が起こした原発事故によって主食の米の安全が脅かされたのにそれに責任を持たず、全袋検査と安全管理を市町村と農家にまかせるのは本末転倒だと指摘しました。
 子どもの18歳までの医療費助成制度を恒久化するとともに、18歳以上のすべての県民のがん検診を含めた健診費用の無料化を求めましたが、県は健診は保険者まかせです。全県民への線量計配布とホールボディカウンターの増設、幼児も測定できるようにと求めました。さらに子どもたちの学習の遅れと体力低下の対策を支援し、正教員を増員すること。子育て支援の理念を横断的、総合的に展開できるようにするために、一元的に対応できる体制の構築を求めました。
 原発賠償金について、これを収入とみなし所得税を課税することや生活保護世帯への収入認定をすることに対し、国会でも見直しを検討すると答弁していることを示し、国へ中止を求めるべきとただしました。
○大震災・原発事故から一年が経過しましたが、避難所の温かい食事の提供と障がい者や高齢者、女性への特別の配慮など避難所の受け入れの改善、学校など避難所となる施設の耐震化を急ぐこと。また、自主避難者にも県内・県外区別なく支援し、民間借り上げ住宅の今後の継続についてもあらためてただしました。
 知事には、多く県民が避難している山形や新潟へ直接出向き、県外避難者と懇談をと提案し、知事は前向きに検討すると答弁しました。
○原発災害と地震・豪雨災害についても、今後も誘発地震の発生が研究者から指摘されていることから、その備えと避難のあり方と地域防災計画の見直しを前倒しで行うこと求めました。県は、安心して暮らせる住環境は必要としながら、一部損壊住宅への支援について県独自の支援はなく市町村まかせです。
 一方、郡山の水害対策については、阿武隈川の上流に遊水地を設置すること、谷田川との合流地点の狭窄部分を掘削する計画を明らかにしました。ため池や雨水貯留施設の整備など減災の視点で市を支援していく、災害情報提供の遅れが問題になったことから、緊急時の災害情報伝達方法を見直すと答弁しました。
 さらに、只見川の豪雨災害では、災害復旧を行うとともに、水害を受けた八木沢集落には、県事業で築堤工事を行うことを明らかにしました。

(2)他会派の質問の特徴について
 大震災・原発事故から1年が経過し、復旧・復興についての質問が大勢でした。そのなかで、福島再生復興特措法については、自民党の代表質問で取り上げましたが、県の受け止めを問うものであり、その内容に迫るものはありませんでしたが、日本共産党の代表質問で問題点が明らかにされ、他会派の認識も変わっていきました。
 また、自民党の代表質問でJR常磐線の復旧見通しを質したのに対して、県は今年7月から用地買収が始まり、5年後の開通を目指していることが明らかになりました。
 復興に向けて事業量が大幅に増える中で県職員を減らしてきた矛盾が吹き出し、他会派も人員増を求めざるを得ない状況となりました。
 復興公営住宅の建設については、県民連合の代表質問に対して、民間借り上げや買い上げの手法を導入して迅速に対応するとして、予算として271億円余を確保していることが明らかになりました。震災に伴う高齢者施設の不足解消への取り組みを取り上げ、県は、建物復旧や備品整備の支援の他、特別養護老人ホーム整備費のかさ上げ措置を継続すると答えました。
 また、作付が迫っている24年産米については、自民党が県産米の販売促進に向けた取り組みを質しましたが、全量買い上げや国の責任に言及することはありませんでした。県は、全袋検査などで安全な米だけを出荷する姿勢をアピールし、販売促進活動を展開すると答弁しました。
 ふくしま未来ネットワークの代表質問では、TPP締結を想定した農業政策も進めるべきと県を質しました。
 その他には、避難区域の見直しや帰還に向けたインフラの整備、再生可能エネルギー導入などについて取り上げた質問が特徴でした。

3、各常任委員会審議の特徴

◆総務常任委員会:宮川えみ子県議
●総務部
○職員不足が他党派も含めて問題になりました。県は、職員不足については、大震災を受けて今年度は152人を他県などからの支援を受け入れ、さらに新年度は210人を受けいれ、建設・土木・農業土木など職員を浜通りに重点的に派遣する方針との答弁でした。受け入れに対する費用は一人当たり年間1千万円程度で国からの交付金で賄うと説明しました。全体の職員増については、条例定数と現人員の差が300人分あるのでそれで対応するとし、不足になれば条例改正もして対応すると答えました。県が行った県職員に対するアンケート調査でも1割が何らかの強いストレスを受けていることがわかり、県もすべての会派も職員不足は共通の認識になりました。福島県はこの10年間で3,200人も正規職員を減らし大震災で重大な事態になっていると指摘し思い切った増員を求めました。
 子どもの県外避難が多くなり、私学の経営が困難になっていることから、私学振興助成金が補正でも新年度予算でも増額されています。
 医大の運営交付金は、学生の増で教員を増やす・実習設備を整備するなどです。会津大学については会津の経済の冷え込みが大きいことへの対策として、IT人材育成や県民健康センターのデータ管理など基本計画策定事業費(仮称)などです。
○福島県税条例の一部を改正する条例については、大震災で家屋が滅失した時等・不動産取得等の減税なども含まれているものの、大震災の復興財源として県税500円・市町村税を500円、合計1,000円を増税するもので反対しました。

●知事直轄
○大震災を受けて、直轄の仕事として正確な情報の収集と発信が重要になっていますが、まったく不十分なことを指摘しました。他会派からもこのような意見が集中しました。

◆企画環境常任委員会:長谷部淳県議
●企画調整部
 2月補正予算では、県原子力災害復興基金の積み増し、新たに県東日本大震災復興交付金基金の造成などで、約386億8,000万円の増額補正でした。
 当初予算では、地域づくり総合支援事業で、被災者を含む団体が自ら行う事業や、被災者交流・支援を目的とした事業を最優先に採択することにし、予算も拡充されました。
 また、住宅用太陽光発電について、設置費用に対して県が直接支援する事業が新設されました。
 県では、2009年現在、県内の一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合が20%に達していることから、2020年には40%の目標導入量とする、「福島県再生可能エネルギー推進ビジョン」に改定します。
 なお、委員会審議で、「首都機能移転対策事業」として、情報収集のために国会へ行くための旅費などの計上をやめるべき、との意見を述べたことに対して、「移転の火を消すべきでない」とする民主党委員の意見がありました。

●生活環境部
 2月補正予算では、警戒区域等の市町村に個人線量計等の購入経費支援、原子力被害応急対策基金・東日本大震災災害廃棄物処理基金の造成、地球温暖化対策推進基金・除染対策基金の積み増しなどで、約1,673億円の増額補正でした。
 当初予算では、災害対策の三つの重点施策、県民生活の安定・向上の三つの柱を掲げるとしています。重点施策は除染による県土の環境回復、避難者の支援、原子力損害対策、三つの柱は一人ひとりがいきいきと輝く社会の実現、安全に安心して暮らせる社会の実現、美しい自然環境に包まれた持続可能な社会の実現、とされます。
 事故原発の監視を強化し、廃炉に向けた中長期ロードマップが着実に実施されるよう国・東電のとりくみを厳しい目線で確認することとあわせ、県自身が県民に対し、事故原発の状況を情報発信します。
 生活路線バス運行維持のための補助について、国がその厳しい要件を3年に限って撤廃しました。その撤廃継続を求めたことに対し、県も「そうしたい」と答弁しました。

◆商労文教常任委員会:神山悦子県議
●商工労働部

 2月補正で、中小企業等へのグループ補助金3億円を増額。今年度は申込みが多く4種類の中小企業へのグループ補助金(国が3/4補助)は、3回に分けて公募した結果、予算が不足する事態になっていることが明らかになりました。新年度は約150億円計上されました。
 雇用対策では、震災避難者の失業手当給付が延長されてきましたが、1〜2月の失業給付切れは1,800人で、そのうち1,100人が浜通りなどの避難者と答弁。県は、緊急雇用創出事業371億円を計上し、25,000人の雇用創出を見込んでいるとしましたが、臨時や非正規ではなく正規雇用を増やすよう求めました。
 一方、新年度予算には、企業誘致促進として、県内での新・増設を行う企業に対し、国内最高の補助率と補助限度額を有する企業立地補助金を創設します。補助上限を35億円から200億円に引き上げるものであり、これを含めた商工労働部の当初予算には反対しました。
 小名浜港背後地(都市センターゾーン)の開発事業協力者であるイオンモール(株)といわき市が、突然今年1月24日にパートナー基本協定を締結したことに関して質しました。県は、まだ具体的に申請はあがっていないとしましたが、イオンモールが提出した「提案書」によれば、店舗面積は3万5千平方メートルで、市内店舗面積の1割を占める超大型施設となり、周辺既存施設への影響があること、県の商業まちづくり条例からも注視していくよう求めました。なお、この開発事業は、小名浜港東港建設との関係も見ておく必要があります。

●企業局
 オーダーメイド方式の工業の森・新白河B工区に、昨年1月に立地基本協定を締結した三菱ガス化学(株)との間で、今年度中に土地売買契約を締結することになりました。県は今年度中に造成工事に着手し、2013年度(平成25)末に工業用地の引き渡しを行うとしています。土地造成面積は6万4421平方メートル。その造成工事代の一部として2月補正に、前受金の一部5億円が資本的収入として計上されました。県が企業との信義から土地代の単価と最終支払い代金については公表しないとしていることは、問題だと批判しました。

●教育庁
○「ふくしまっ子体験活動応援事業」が12,000件、46万人(2月末)が利用するほど好評で、2月補正で約14億8千万円増額補正しました。これを含め11年度はトータル約45億8千万円弱でしたが、新年度当初は約20億円しか計上していません。その理由は、夏・冬の長期休み期間に集中させ子ども会やPTAなどの団体への補助としたことです。また、学校教育活動の一環として宿泊を伴う活動に補助することにシフトし、実際には8割が小学生(1泊5千円)の利用だったことから経費が安く見込まれたためとしました。予算不足が懸念されることを指摘し、今後も必要予算の計上を求めました。
○2月補正で、すべての小中学校・県立学校の給食施設に、給食食材(食前)の検査機器を整備することとし、検査要員1人分の人件費も含め13億3,800万円を計上。さらに当初予算では、より精密に食後の給食食材を検査するため、県内5事業所に委託して行う予算2億6,000万円が計上されました。
○12年秋に小中学校で県版の学力テストを実施します。これは、翌年4月1日の全国学力テストを前提に実施するものであり、震災・原発事故で基礎学力にこそ力を入れるべきと中止を求めました。
○スクールカウンセラーは、国庫補助により中学校に237人、高校に88人を配置します。小学校は80人配置し、合計約400人となります。スクールソーシャルワーカーは8人増やし、26人配置します。
○教職員の配置については、これまでも県独自の30人・33人程度学級については評価をしつつも、教員配置については常勤講師ではなく正教員とするよう求めてきました。
 今年度は、昨年の大震災・原発事故が発生し教員配置のあり方が大問題となりました。
 県は今年度とど同程度の加配を国に要望しているとしながらも、来年度の教員定数の上限を減員する条例が提案されたことから、被災した本県では、複数担任制とするくらいの正教員の増員が必要だと指摘しこの条例には反対しました。
 以上、県教育委員会の当初予算と、教職員定数条例を一部改正し上限定数を減員する条例の2議案には反対しました。
 また、放射線等に関する副読本の見直しを求める意見書は、自民党と共産党から2議案提案され、自民党紹介は採択、共産党紹介の請願は趣旨採択とされました。

◆農林水産常任委員会:阿部裕美子県議
 福島県の農林水産業は田畑や森林、海の放射能汚染、風評被害と原発事故の影響を最も強く受け、危機的状況におかれている中で、今後の復興をどう進めていくのか農民の思いにこたえた対応が求められています。
 県は「福島県復興計画」に掲げる「農林水産業再生プロジェクト」を進めるとして897億8,498万円(前年度当初予算対比84.0%の増)を予算計上しました。
 しかし、作付面積、収穫量とも全国第4位、農業産出額では1,000億円と県内で第1位の米については、国は新たな基準100ベクレルを超えたところの作付制限をするとしました。農民の怒りの前に100ベクレルから500ベクレルの範囲については市町村の判断で作付を認めてもよいとしましたが、農地の荒廃、耕作放棄地の拡大は否めません。作付制限をなくし、100ベクレルを超えたところは実証田として研究をし、すべて国が買い上げ、管理を行うことを国に求めるべきことを要求しましたが、県は国の方針に従うと述べるのみでした。
 除染についても、反転耕やゼオライト、カリウム施肥については農民の反発も強く、手探り状況といえます。
 山奥深くほとんど通る車もないところに多額の予算をつける不要不急の山のみち地域づくり交付金3億5070万円には反対の意見を述べました。
 議案第57号・県の行う建設事業等に対する市町村負担についても市町村に負担を強いるものとして反対しました。

◆土木常任委員会:宮本しづえ県議
 土木部一般会計予算は、前年度比2.6倍の2,529億円、その中の公共事業費は前年度比2.5倍の1,939億円となり、大型予算となりました。
 復興公営住宅建設は、新年度で1,000戸、向こう5年間で5,000戸を見込んでいるが、どこに建設するかは未定。市町村の要望を聴取し今後決定する。5,000戸の根拠は、福大が実施した警戒区域の避難者の意向調査によると、公営住宅入居を希望する世帯が5,000戸と集計されたため、県が代行して建設するとしています。市町村を支援し、行政が責任もって住民の意向調査を実施すべきと求めました。
 防災緑地事業に316億円が計上されているが、高台移転事業と連動する。復興交付金事業として実施するとのことだが、住民合意抜きでの実施としないよう求めました。他党派の議員からも、国の制度にのっとったやり方では、住宅再建は困難な事例も相当出てきます。県単独の支援も検討すべきと求めたのに対して、岩手県の例も紹介して、生活再建の支援策を求めました。しかし、県は、岩手県の被災者数と本県の被災者数には大きな開きがあり、財政的には同じ支援策は困難と答弁。これには、被災者はどこに住んでいても同じ苦しみ、被害が大きい分国に財政支援を求めていくべきだと指摘しました。
 仮設住宅の追い炊き設備について、ヒーター設備も含めて検討を求めたのに対して、県の担当者は、ヒーターも含めて国に要望してきたが、ヒーター製造企業が小さな企業のために量産できず、不公平が生じるとの理由で実現を見ていないとの説明。今後さらに国に求める必要があります。
 復興交付金事業が、使い勝手が悪いと指摘されていますが、県は、366億円の事業費の申請をしたが、交付決定は僅か5.5億円に留まったことが明らかになりました。復興庁が相当の縛りをかけている模様で、大規模宅地崩壊復旧事業の申請をした個所を、現地を見てから決定するとされたことに対して、県のある担当者は、復興庁は暇なのでしょうと痛烈な皮肉を述べるほどです。
 復興交付金は、福島県は大きいように見えても除染費は使い勝手がいい、まちづくりなどの国交省関係の事業はこれまでのように縛りがあって、なかなか認めてもらえない。復興、生活再建という視点で事業採択を考えてもらえるよう国に要望してほしいとの声が出されています。
 この間、共産党が一貫して見直しを求めてきた小名浜東港開発事業に、新年度も国直轄事業を含めて、約64億円が組まれました。人工島に橋を架けるのが主な事業内容とのことですが、不要不急のムダを削り既存の港湾整備、被災県民支援にこそ全力を挙げるべきと求め、関連予算に反対しました。

◆子育て・健康・医療対策特別委員会
 阿部・長谷部県議の2人が委員で、長谷部県議が理事となりました。
 12月定例会で設置が決まり、2月定例会開会前日、会期中の2回、開催されました。
 「子育て支援・教育・人づくり」、「県民の健康・医療・福祉対策」のそれぞれについて、執行部によるこれまでのとりくみと現状の説明と質疑をしました。
 「安心して子どもを生み、育てることができる環境の整備」、「未来につなげる教育の復旧・振興、福島の次代を担う人づくり」、「被災によるこころのケア対策」、「健康の保持・増進」、「福祉サービスの維持・確保」、「医療提供体制の再構築及び強化」「放射線医学等の医療体制の構築」が調査内容。
 仮設住宅など高齢者の緊急通報システム、子どもや保護者の相談事業、在宅精神障がい者への訪問支援、県民健康管理調査、ホールボディカウンター検査、医療人材確保、除染の推進などの現状が示され、今後、充実を図る施策展開へ向け、議論が進められます。

◆産業振興・雇用・県土再生対策特別委員会
 神山・宮川県議の2人が委員で、宮川県議が理事となりました。
 第1回目の審査は、中小企業振興・再生可能エネルギー・医療関連産業・観光交流・農林水産業についてです。中小企業支援策のグループ補助は大変評判がいいので要望があったものはすべて救うという観点から対応すべき、地域の中小企業の一つ一つが復興することが真の復興になることを求めました。
 2回目の審査は、環境回復の支援・生活再建の支援・被災地の復興まちづくり・県土連携交流ネットワーク基盤の強化です。住宅対策で、災害救助法で対応している住宅の応急修理(52万円までの無料修繕)が3月31日で申請打ち切りになるので延長を求めたところ、県は、市町村の要望があれば厚労省に要望すると答弁しました。また、一部損壊住宅に義援金の対象になるよう求めたことに対し、検討したいと答弁、一部損壊住宅支援は県の復興計画にもあるので今後とも支援策を実現するよう求めました。その他、災害がれき処理対策・賠償問題・警戒区域内の防犯と火災対策などが出されました。

4、請願・意見書について

(1)採択された意見書〜16件
(1)基礎自治体への円滑な権限移譲に向けた支援策の充実を求める意見書
(2)法務局の登記の事務・権限を地方に移管しないことを求める意見書
(3)新公益法人への移行期限延長を求める意見書
(4)東京電力福島第1原発の早期原因究明を求める意見書
(5)被災したJR常磐線の復旧に関し、国の財政支援を求める意見書
(6)JR只見線の早期開通を求める意見書
(7)原子力災害避難者の安全・安心を確保するための法律の制定を求める意見書
(8)福島の子どもの放射線被ばくに対する総合的な法整備を求める意見書
(9)父子家庭支援策の拡充を求める意見書
(10)「心の健康を守り推進する基本法」の制定を求める意見書
(11)障害者総合福祉法の制定を求める意見書
(12)放射線教育の副読本を本県の現状を踏まえた内容の教材に見直すことを求める意見書
(13)若者雇用をめぐるミスマッチ解消を求める意見書
(14)県最低賃金の引き上げと早期発効を求める意見書
(15)県バイオマス循環システムの構築を求める意見書
(16)常磐道、国道6号の早急な開通を求める意見書
※党県議団は(1)、(3)の2件に反対しました。

(2)わが党が紹介議員となった請願の結果について
 2月定例県議会に提出され、党県議団が紹介議員となった請願は、
◆「衆議院議員比例定数削減に反対し、民意を反映する制度への改善を求める意見書の提出について」(国会議員比例定数削減に反対する福島県民の会)
◆「原子力損害賠償金への非課税を求める意見書の提出について」(福島県商工団体連合会)
◆「特例水準解消による公的年金削減に反対する意見書の提出について」(全日本年金者組合県本部)
◆「高齢者肺炎球菌ワクチン接種事業の期間延長を求めることについて」(全日本年金者組合県本部)
◆「看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士に対する奨学金制度の創設を求めることについて」(県民医連)
◆「子どもが遊べる屋内運動施設の小学校区単位での整備を求めることについて」(県民医連提出)
◆「放射線等に関する副読本の見直しを求める意見書の提出について」(新婦人県本部)
◆「米の作付制限ではなく、国による管理を求める意見書の提出について」(県農民連)
以上の8件でした。そのうち、新婦人県本部が提出した「放射線等に関する副読本の見直しを求める意見書の提出について」は趣旨採択となり、その他の7件は、継続審査となりました。また、12月議会に提出され継続審査となっていた請願は引き続き継続とされました。

以 上



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